冷蔵庫を買った

買い物で長考するのが苦手だ。大きな買い物ほどよく調べたほうがいいことはわかっているが、悩むこと自体のストレスに負けて衝動で買ってしまうことが多い。
家電、家具の類はたいてい一日で店を回って購入し、こだわりもないので何年も同じものを使う。冷蔵庫もそうだ。一人暮らしを始めた際に買った容量120ℓのものを、二人暮らしになってからも使い続けていた。容量が足りないとは思わなかった。二、三日に一回、仕事の帰りにスーパーに立ち寄っていれば事足りた。
だがその生活に限界がきた。コロナ禍で二人とも在宅生活になり、一日三食を家で取るようになった。また、買い出しを十日に一回のネットスーパーに抑えた生活は、調味料だけで三分の一が埋まる冷蔵庫では難しかった。「冷蔵庫を買い換えねば」と呟くと、秋にセールがあるからそれまで待つと良いとリプライをもらった。夏の半ばの頃だったと思う。ならばそれまで待とうと購入を保留したが、九月になり、涼しくなった途端買わずにはいられなくなった。家電屋に駆け込んでその日のうちに購入し、翌日に搬入を終えた。見下ろしていた小さな冷蔵庫から、見上げるほどの冷蔵庫へ。容量は約三倍である。ガラス扉にはマグネットがつかず、ミステリと言う勿れで読んだやつだ、とひそかに笑った。作中では「今どき最新の冷蔵庫はマグネットがつかないって本当ですか!?」「そうなのよ!あなた!つかないの!」という会話だったが、ガラス扉ではなく冷蔵庫側面であればついた。整くんに教えてあげたい。

澤村伊智「予言の島」


この一冊を読み終わったら、もう次に読む本がなくなってしまう。
好きな作家に対してそうした、漠然とした不安を抱くことがあって、好きなのに新作を読めなかったりする。現在そうなっている小説家が澤村伊智と加藤シゲアキだけれど、ふしぎなことに、澤村伊智に関しては文体は好みではない。ないから、個人的な読後感として当たり外れも激しい。分類としてはホラー小説が多いものの、かわいた文章で、のめり込めるかどうかは読者に委ねられているのもあるのかなと思う。
「予言の島」に関してはのめり込む間もなく読み終えてしまった。ノストラダムスの大予言や霊能者ブームを体験している身としては、物語に没入する素養は充分なはずだったのだが……。種明かしについては早々に見当がついたので、答え合わせをしている感覚で読んだせいもあるかもしれない。
それでもがっかりしないのがこれまたふしぎなところで、「じゃあ大好きなししりばの家を読み返しつつ次の新作を待とう」となる。未読作を二、三作溜めているはずなのでまた近々読みたい。